人は変われる。被害者意識を脱するために目的論を使いこなそう。
一般的な心理学には「原因論」が用いられています。「過去の何らかの原因」によって、未来に致命的な影響が及ぶという考え方です。自分の生きづらさを知る上で、過去の出来事やトラウマの存在を突き詰めることはとても大切なことです。
しかし、その原因に気を取られすぎてしまうと「被害者意識が強まる」「自分を変えられない」などの弊害が起こります。
アドラー心理学では「原因論」ではなく「目的論」を推奨しています。今日は人が変わる上で必要な「目的論」のメリットについて詳しくお話します。
恋人ができない原因は?
例えば「恋人がいない」という事実があったとします。これを原因論で考えると
・ブサイクだから、モテない
・若くないから、声をかけてもらえない
・ストライクゾーンが狭いから、好きな人ができない
といった項目があげられるかと思います。一般的によく聞く会話ですし、こういった思考が当たり前となっていますよね。
しかしその原因のせいで「自分は変われない」と考えてしまう。だから、改善の余地がなくなってしまうし、半ば行動することを「諦めざるを得ない」気持ちになるかなぁと思います。
恋人を作らない目的は?
では同じ内容を、目的論でアプローチしてみます。
目的論では
「傷つきたくない」という目的が先にあり
「恋人を作らない」という選択を自分でしている
と捉えます。目的があるからこそ、それに沿った行動になっているという考え方です。原因論と違い、目的を知った上で「自分がどうしていくか」を選ぶことができます。すると視野が広がるだけでなく、そこに改善の余地が生まれるのです。
原因と目的論の大きな違い
この2つの大きな違いは、そこに「主体性があるかどうか」です。
原因論では「今の自分にはもうどうすることもできない(原因に支配されている)」と捉えることにより被害者意識を高めてしまいますが、目的論では「今の自分の目的に沿って現実が動いている(主体的に選んでいる)」と知ることにより当事者意識が生まれます。
それによって「じゃあこれからどうするのか」という意志が込められ、未来志向に切り替わるのです。これが「自分の意志に沿って人生が進んでいる」ことを自覚するきっかけになります。
また、自分自身の性質や過去に執着することもなくなってきます。建設的な目的を認識することにより、自他ともに受け入れがたい行動に寛容になれます。その人が持つ「目的」を知ろうとすることは、良好な関係を築く上で非常に大切な姿勢となるのです。
建設的な目的を知る
目的論は子育てにもよく活用されています。一見「非建設的な問題行動」をしているように見えても、そこには本人の「建設的な目的」が存在していることを見逃してはなりません。
反抗期なんかまさにそう。親に攻撃したり反抗していても、本当は「もっと自分に関心を持ってほしい」だったり「過度な期待やプレッシャーを与えないで欲しい」だったり。本人の無意識な「目的」が先にあり、行動があります。
子供がもし不適切な行動をとったとしても「この子の建設的な目的は一体なんだろう?」と思いを馳せることにより、まずはその子の気持ちに寄り添うことができます。
どこに注目するかで反応が変わる
相手が非建設的な行動に出たときにその「非建設的な行動」に注目するのか、隠れた「建設的な目的」に注目するのかは自分が選べます。
子供は親の関心を得るのに必死です。よって「良いこと悪いこと」ではなく「注目されること」を学び、それを増やしていくのです。
親が子供の「非建設的な行動」にばかり注目してしまうと、非建設的な行動ばかりが増えていってしまう‥これは困りますよね。実は「おねしょ」なんかも親の気を引く非建設的行動のひとつなんです。
ですから「建設的な目的」「建設的な行動」に注目し「非建設的」なものに関しては関心を示さないという姿勢が大切になるのです。子供だけでなく、すべての人間関係に対して同じことが言えます。
人は変われると信じること
大事なのはどんなときも「建設的な目的がある」という前提で人を見ることです。そしてすべての人がよりよい人生を「主体的に選んでいける」ことを、自分が信じてあげることです。
被害者意識で「自分は変われない」と思い込んだり、人を「変えたい」と思う前に「誰しも人は主体性を持てばいつでも変われる」ということを自分から信じてみましょう。